今日九重ににほひぬるかな

2023年3月24日コラム

3月に入ってから暖かい日が続くようになり、今年の大泉の桜は、いつもの春より心持ち早目の満開となりました。

西武池袋線「大泉学園」駅から北へ伸びる「大泉学園通り」は桜並木で知られ、今まさに桜のトンネルとなって、往来の目を楽しませています。

日本に咲く桜の約80％を占めるほど親しまれているソメイヨシノですが、東京にはその他にも、八重や枝垂れなど100種類以上の様々な桜が咲くのだそうです。

大泉には、駅から南へ5分ほど歩いた近くに、9種類もの桜が植えられている場所があります。植物学者の牧野富太郎博士の「練馬区立牧野記念庭園」です。

日本の植物学の父とも呼ばれる牧野富太郎博士は、4月からはじまるNHK朝の連続ドラマ「らんまん」の主人公のモデル。牧野博士にちなんだ催しものが、花や植物が好きな人々の間ではちょっとした話題になっています。

「練馬区立牧野記念庭園」は、牧野博士が、大正15年（1926年）から生涯を終える昭和32年（1957年）までの約30年を過ごした邸宅の跡地で、博士が大切にした庭園には約300種類の草木類が生育しているとのこと。

練馬区牧野記念庭園入口　門の屋根を覆うように伸びる樹はヒカンザクラ

牧野記念庭園内　講習室の横から裏手にかけて数種類の桜が咲いている

国花となるほど日本人に親しまれている桜ですが、牧野博士の桜好きは有名で、故郷高知の「仙台屋桜」の苗木や葉を弟子に頼んでいます。随筆の中でも「桜の花の雲で東京を埋め、道には五、六里も続く花のトンネルを作らねばならぬ」と語っているのだとか。

文字通り、花のトンネルとなる大泉学園通りの桜並木は、牧野博士の邸宅であった記念庭園から散歩で行ける距離。博士がご覧になることができたなら、大いに喜ばれたのではないでしょうか。

さて、件の桜並木の大泉学園通りでは、この数年、新型コロナウィルスの感染対策のために開催を見合わされていた「第18回大泉さくら祭り」が3月26（日）に開催されます。前回の第17回が2019年ですから実に4年ぶりです。

会場は大泉中学校、校門の周囲にピンクの幟が立っています。

寒さも和らいで体も軽くなる時期、ようやく気兼ねなく親しい人を訪ねることもできるようになりました。

春の陽気の誘いにのって、桜の下をそぞろ歩いてみてはいかがでしょうか。

今日九重に にほひぬるかな